その日以降、着信拒否にしているからか、社長からは勿論連絡はない。

瑞樹とも、仕事が忙しい関係から、会うことはなくて。

気がつけばまた、1週間が過ぎ、週末が来ていた。

毎日が淡々と過ぎているのに、心ここにあらずといった感じ。

家から一歩も出る気になれなくて。

でも、それではダメだと思い立ち、天気のいい外に、出ることにした。

街をブラブラ歩いて、ウィンドウショッピング。

いつもなら、服や、化粧品を見るだけでウキウキしていたはずなのに、何故かピンと来ない。

…。

歩いていた足がピタッと止まり、足に鉛でもついたんじゃないかと思うほど重たくなった。

あの日の宝石店から、社長とあの日の女性が笑顔で出てきた。

なんと言うタイミングだろう。

…社長もまた、私に気づいて、女性に何かを告げると、こちらに向かって早足で歩いてくる。

逃げなくちゃ。

そう思うのに、足が動かない。

どんどん近づいてくる社長、私は重たい足を何とか後ろへ下げる。

…と。

急に、体が動き出した。

「結愛、こっち」
「ぇ、…瑞樹さん?」

「結愛!」

片手に大きな紙袋を持った瑞樹が、私の手を引いて走り出す。