「…届かない」

150センチと言う小さいからだを目一杯伸ばし、頼まれた資料をホワイトボードに張り付ける作業をしている私は、新入社員の有坂結愛。

両親も小柄で、その間に産まれた私も勿論小さい。

小さくて可愛いと言われても、嬉しくない。

私はいつも子供扱い。大人になった今も、女性扱いなんてされるわけもなく。

「…他の背の高い人に、頼めばいいのに」

総務課の新入社員は私だけ。一緒にしてくれる先輩は、別の用事を頼まれて、結局一人でこの仕事。

そんなとき、タイミング良く会議室のドアが開いた。

先輩が帰ってきたのかな。これで、この資料もはれる。

「学生がこんなところで何してる?」

知らない声。
ん?

学生?…もしかして、私のこと?!

「なっ?!…れっきとした大人です!」

カチンときた私は、怒った声で振り返った。




顔を見てから、反論すべきだったと後悔しても、後の祭り。

「君は…総務課の…新入社員、か?」

…未だ、疑いの目で、見られる始末。

私はため息をつき、もう一度頷いて見せた。