「着いたぞ」という梓の声でしがみ付いていた体を起こしバイクから降りる。





メットの外し方が分からなくて手間取っていると、横から梓の手が伸びてきてスムーズに外してくれた。




周りを見渡せば、そこはコンクリートで出来た壁に囲われておりどうやら地下のような空間になっている。




「………」




ここ、明らかに私の家じゃない。




てっきり送ってくれるものだとばかり思っていた私は、もちろんここが私のマンションの前だと思っていて…だけどどう見ても知らない場所だ。




でもよく考えたら、梓は私の家の場所を知らない。だって、いつも倉庫から送ってくれるのはあの赤髪の兄ちゃんが運転する車で悠真か佑衣が送ってくれる事が多いから。それに休みの日は琉聖が迎えに来る事になっていて……





だから梓が私の家を知らないのは当たり前で…もちろん家の場所を言っていないんだからそこに着くはずがない。




「あの…ここ、どこ?」





何やら車庫らしき所にバイクを置いて来たらしい梓が戻ってきて、そう遠慮がちに聞いて見せれば





「俺ん家」





とだけ答えて重そうな鉄製の扉を開く。





「…………」



「……え?」





俺ん家!?梓ん家!!?何で!!





そんな私の疑問も梓は御構い無しにどんどんと歩いて行くと、しばらくして広いロビーが目に入り…どうやらここはマンションらしい。




観葉植物や海が描かれた絵が置いてある。
オシャレなマンション。