ろくに外を出歩くことも許されないあたしは、昼間することもない。


傷ついた隊士たちを治すといっても、常に怪我人が出ているわけではなく、客足がぱったりと途絶えることも多かった。


隊士たちも極力、怪我には気を遣っているようで、時には誰とも話すことなく一日を終えることだってある。



藤堂さんに話しかけられたのは、そんな日が続いた夜のことだった。



「やあ、紅」


「こんにちは」



廊下で出会った藤堂さんは、団子を食べていた。


しばらく姿が見えなかったから、きっとどこかで買ってきたんだろう。



その団子を見ているうちに、あたしはあることを思い出す。


最後に甘味を食べたのは、父様に連れられてだっけ。


たしか近くの甘味処であたしは団子、父様はあんみつ。


もう随分と昔のことだけどあれが一番の贅沢だったから、よく覚えている。



あのときは父様も優しくて、分けてもらったあんみつも美味しくて……本当に楽しかったな。




「紅、これ欲しいの?」


そう聞かれてはっと我に返る。

いけない、勘違いさせちゃった。