視界が歪んでいた。


こんな経験は今までにしたことがなくて、病気に慣れているあたしでさえ嫌気がさしてしまうほどだった。


こんなのよく我慢できてたな、あの人……


そんなうつろな世界で、ずっとあたしのそばにいてくれる人がいた。



「大丈夫?」


あたしが治したその腕で、ふとんを首元までかけ直してくれる。




「……大丈夫です」


「嘘つき。焦点が定まってないよ」


おでこの上に乗っていた手ぬぐいを持ち上げられる。


ぴちゃりと水の音がしたかと思うと、すこしして額にひんやりした何かが置かれた。


……あ、また替えてくれたんだ。


さっきから替えてもらってばっかりだ。


きっと熱のせいで、すぐ手ぬぐいが温くなってしまうんだろう。


あたしのせいで時間をとらせてしまっていると思うと、なんだか申し訳ない気持ちになった。