異変に気づいたのは、物置小屋に向かっている途中だった。


以前この小屋を使わせてもらってるとき、置き忘れたものがあった。


それを取りに行こうとして歩いていたら、物置小屋とはまた違う土蔵から......男の人のうめき声が聞こえた。


とても、辛そうな声。



扉が少し開いていて、あたしは考えるよりも先に中へと足を運んだ。


そこに広がっていた光景は。



「...誰だ、お前は......」


部屋の中で磔にされていた、男の人。


虚ろな目に乱れ切った髪。


きっと元は整った顔立ちをしていたんだろう、しかしそんな面影さえ消えかかっていて。



「見せもんじゃねぇぞ」


間違いない。これは拷問だ。


手と足の甲を深々と貫く釘にあたしは見覚えがあった。



「お前にはこの痛み、分からねぇだろうな」


「......分かりますよ」


「は?」


全身を駆け巡る鈍痛は今でも鮮明に思い出せる。