「姉さん、明里チャンに取りあえず座ってもらいなよ。珈琲でも入れるからさ」

今にも倒れそうにひどい顔色でもしていたのか、わたしを気遣う言葉が耳に届き、ゆるゆるとそっちに向く。
少し離れて立っていた出迎えの男性が瑠衣子さんを『姉さん』と呼んで、こっちに流し目をしながら奥に引っ込んだ。似ていない三兄妹なんだな、とぼんやり思った。

「ありがとヤマト」

声を張って返事を返した彼女は、「どうぞ」と笑んでわたし達をソファの方へと促した。

壁際の長ソファにわたしと津田さん。リビングテーブルの向かいに並ぶ一人掛け用に、亮ちゃんと瑠衣子さんが座る。
 
「征一郎さんからも聴いてたのよね。亮君に可愛らしい幼馴染の子がいるのは。ウチって『妹』だけいないから仲良くしたいんだけど、いい?」

「その前に・・・俺からちゃんと紹介させて欲しいんですが」

隣りに視線を傾げ、思わせぶりに微笑む彼女に。亮ちゃんは苦そうな笑みを滲ませた。
それから表情を戻して、わたしをあの見通せない眼差しで見つめ。言った。

「・・・明里。彼女が俺の婚約者だ」