chapter2 出会って


ゆさゆさ、と身体が揺すられている。

「───ちゃん?」

誰かが私に呼びかけている。

「……えちゃん、お姉ちゃん、どうしたの?」

言葉が鮮明に聞こえ始めて、私はぱちりと目を開けた。

どうやら自分は横たわっているらしい。そしてこちらを覗き込んでいるのは、栗色の髪に藍色の瞳をした、年端もいかない少女だった。

どうしたものか、彼女の後ろには森のようなものがずっと広がっているのが見えるし、背中に触れるのは明らかにアスファルトではなく柔らかい地面だ。

「……?」

クエスチョンマークが自分の頭の上を回っているのがわかる。

「ええと、ええっと……待って」

私はむくりと起き上がった。起き上がれる。

次に手を握ってみる。握れる。

次には少女の頭を撫でてみる。こてんと不思議そうに首を傾げられた。

待てよ、私、どうなったんだっけ?

女の子を助けて、私は確かにあの時、逃げられずにトラックに轢かれたはず。やっぱりそうだ。

言いたくないけど、どう考えても死んでいるはず。それなのに自由に動けるし、感覚もある。ということは考えられるのは……その1、夢を見ているか、その2、幽霊になってしまったか、その3、それとも天国に居るか。

ばしっ、と自分に力いっぱいビンタする。

「お、お姉ちゃん!?」

「うーん、やっぱり痛い」

ひりひりとする頬を擦りながら視線を落とす。いつの間に着替えたのか、白いワンピースのようなものを着ている。

「感覚はあるし、足、あるもんなぁ……ってことはどっちも違うでしょ。なんか服白いし、そっか……ここは天国?」

こちらを心配そうな顔で見ている少女も日本では明らかに有り得ない色をしているし、改めて見るととんでもなく可愛い。

「あなたは天使?」

大真面目な顔で尋ねると、少女はぽかんと口を開けた。