chapter4 気づいて


城にやって来てから1週間。あまり出歩くなという言い付けに文句は無いし、生活に不満は無い。

ただ一つだけもう我慢ならないことがあった。

「……あの、シャルキさん」

「はい?」

シャルキさんは見張りを命じられているのか、王子本人が居ない時は私と同じ部屋で過ごしている。焦げ茶の髪を揺らし、王子の側近は持っていたカップを置いて首を傾げた。

「私ってどうして3食全てパイなんでしょう……?」

まあパイ自体は美味しい。城の料理人が作ったとなればやはりとても美味しかったのだが。

毎日3食、それが1週間だからもう21個食べていることになる。そしてこの目の前に置かれているのが22個目。

正直、流石にしんどい。我儘を言う訳では無いけれど、何か違う物を食べさせてくれてもいいんじゃないかと思う。

「嫌がらせ?」

仮面夫婦を演じようと提案してきたのは向こうだし、状況的にそんなはずはないと思うもののどう考えても辿り着くのはそこしかない。

「あー……」

相槌を打ったシャルキさんがカップに口をつける。そのまま動かなくなったと思うと肩を震わせ始めた。

「……ふっ、ふふふふ、あー駄目だ、可笑しすぎる」

「何笑ってるんですか、私は真剣なんですよ!」

「いや……くくっ……」

シャルキさんは目尻に滲んだ涙を拭っている。

「もう!パイに苦しむ私を見て面白がってるんでしょう!笑ってないで殿下に進言するなりして助けてくださいよー!」

「まあ気持ちは……わっ、わ、わかりますけど……っ」

お願いですから頑張って喋ってください側近どの。