社長の袖をひっぱってぶうっと頬を膨らますと、お茶のお代わりを持ってきたメグミちゃんに笑われてしまった。

「灯里さんと大和さんってホントに仲良しですよね。いっそのこと本当に付き合って結婚してしまえばいいのに。そうしたらこの会社も安泰ってことで丸く収まりますよ」

「な、何てこと言うの。メグミちゃんは私と社長とは何もないって知ってるでしょ」
会社のために結婚なんてできない。

「だって、大和さん素敵じゃないですか。社長ですよ、社長。35才、顔ヨシ体型ヨシ仕事が出来て経済力ヨシなんて超優良物件ほかにいます?」
真面目に言ってんのかなこの子は。

「じゃ、メグミちゃんがヨメにいけば?超優良物件なんでしょ?」

「私はダメですよぉ。中学から付き合ってる彼ともう婚約してますから~」
その左手薬指に燦然と輝くダイヤのリングを指差してくる。
メグミちゃんは先日婚約したばかりで毎日が薔薇色。

「はいはい、のろけはいいです。散々聞きましたから」
わざとらしくため息を吐いた。

「親戚って言ってもお二人に血縁はないんでしょ?何にも問題ないのに。
大和さんの外出のお供は必ず灯里さんだから私以外のうちのスタッフだってみんなお二人がそういう仲だって思ってますよ。ホントにそうなればいいって話です」

”そういう仲”ね。
そりゃそうでしょう。そう思わせているんだから。