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金曜日の午後、社長命令で午後半休を言い渡された私は自宅アパートにいた。

前日のこと。大和社長から電話で関東支社にとって、いやフォレストハウジングにとって非常に大切なものを社長秘書のアパート宛てに送ったからしっかる受け取るようにと言われたのだ。

「どうして会社宛てにしなかったんですか?」
「会社宛てじゃ困るからに決まってるじゃないか。しっかり確実に受け取れよ」

有無を言わさぬ様子にそんなに大事なものってなんだろうと興味をひかれた。

「届いたら開けて中身を見てもいいんですか?」
「もちろんだ。届いた後の采配は灯里に任せるから。お前が確認するまでこのことは下北にも言うなよ」

社長の勿体付けたような態度に疑問を感じなかったかと言えばちょっとだけおかしいと思ったけれど、私は素直に「ハイ」と言ってここでこうして荷物が届くのを待っているわけだ。
おまけに金曜日だけれど、珍しく長野に戻ってくるように言われなかった。

「週末、私そっちに帰らなくていいんですか?」
「は?ああ、うん。金曜日はいい。とにかく荷物を頼む」
何とも歯切れの悪い返事が返ってきたのも会社にとって荷物がそんなに重要なものだと思わせる要因だった。