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社長の帰国を出迎えるため、念入りにメイクをして滅多に着ないワンピースと運転しやすいヒールの中でも可愛めなブーツをはいて意気揚々と部屋を出た。

大和社長がやっと帰ってくる。
カナダ出張中もメールや電話でやり取りはしていたけれど、会うと会わないとでは全然違う。
遠く離れた外国にいるという長野と厚木の中距離恋愛とも全く違う状況に社長に対する私の気持ちは一層強いものになっていた。

早く会いたい。
一刻も早く会いたい。

私の愛車になりつつある社用車のエンジンをかけると、その重低音に口元が少し緩んでしまう。
行きは私ひとりだけど、帰りはこの助手席に社長がいる。
話したいことがたくさんある。
聞きたいこともたくさんある。

宿題を片付けたと言ったら社長はなんて答えてくれるだろうか。
そして、
私の気持ちを受け入れてくれるだろうか。
私のことを保護対象から恋愛対象に切り替えてくれるだろうか。