「本木さん」名前を呼ばれ、私に駆け寄ってきた女性の顔を見て驚いた。

ーーー西倉恭香、その人だ。
私が知っている西倉恭香のイメージとは違う。ナチュラルメイクにオフホワイトのセーターとシンプルな紺色スカート。

偶然…じゃないよね。

櫂からつきまといの話を聞いていた私は身構える。
まさか、私に危害を加えるとかってことではないと思うけど、待ち伏せしてたんじゃないだろうか。

私の驚きおびえたような顔を見て西倉恭香の表情も硬くなり、身体を小さく縮めるようにしている。

「あの、謝りたいの。あなたに」
私に向けられた声は震えているようにも聞こえる。

この人言ってるんだろう。
私は四年前の彼女を思い出して…目を見開いた。
先週のパーティーで出会った彼女だって、四年前とたいして変わらない印象だった。

自信満々
生粋のお嬢様
ブランドで固めたファッション
くるっとキレイに巻かれたアーモンド色の艶々したロングヘアー
フルメイクの長い睫毛にぷっくりとした唇
攻撃的な口調

化粧室で顔を合わせた途端の皮肉混じりの口撃。

それが…何?

今、目の前にいる西倉恭香は別人かと思う程小さく見える。

よく見ると両手をぎゅっと握りしめ、口元も引き締まり、自信がないのか、はたまた私を怖がっているのか上目がちに私を見つめる。
まるで別人。この人の考えていることがわからない、理解できない。

「どういう事でしょう」