「こんなことになってすみませんでした」
タクシーが走り出してすぐに大和社長に謝罪した。

「は?」
暗いタクシーの中で社長は不機嫌な声を出した。

「お前、なんか悪さしたの?」

「してませんよ、私はね!
でも、結果的に社長もイースト設計の皆さんにも嫌な思いをさせてしまったじゃないですか」
ちょっとムキになって反論する。私が妙な男を誘ったとか引き寄せてあんなことになったとでもいうのなら心外だ。

「バカか、お前は」
私の左頬がつねられる。

「いひゃい、いひゃい!」ひどっ!

「ああいうことは絶対にやる方が悪いんだ。力で押さえつけるなんて最低なやり方だろうが。お前は被害者だ。申し訳ないなんて考えることが間違っている。だから謝るな」
真顔で見つめられる。暗くても社長の瞳が真っ直ぐ私を見ていることがわかる。
ーーー大和社長。

「それよりな、俺は俺がお前を助けられなかったことの方がショックだ」
大きなため息とともにプイっと窓の方を向いてしまった。

「そんな。社長は他の方を助けていたんだし、仮にソファースペースのところにいてもあそこからじゃ私の姿は見えなかっただろうし。社長が悪いわけじゃ」