私がいなくなったら大和さんが困るんじゃないかなんて考えていた二か月前の私に、その心配は全く不要だと言ってやりたい。

あの男は実に頻繁に私を長野に呼び出してくるのだ。

私のことが必要なときに簡単に呼び出すのだから私が長野にいても厚木にいても社長にとってはあまり変わらないんじゃないかって気がする。

社長の夜の会合のお供の時は昼過ぎに厚木を早退して長野入りし、会合に出席後そのまま実家に泊まり翌朝長野から高速道路を飛ばして午前中のうちに厚木に出勤する。
昼の会合の時は朝一番で厚木から長野に向かい、会合が終わればその日のうちに厚木に帰ることもある。

いくら車の運転に慣れていると言っても週イチで呼ばれると少々めんどくさい。

片道二時間半。
私の愛車は3年前にこんなに高速を走ることは想定しないで購入したもので、安価な小型車は街乗りにはいいけど長時間の運転では肩が凝り腰にもかなりの負担になる。


そんな時、進さんのお店でバイトの女の子と雑談しているときに小さめでもLのマークの付いた高級車なら運転しても疲れないかもねーなんて話していたら、翌週にはLのマークの付いた車が社用車として納品されて社長に「灯里、これ使え」と言われたのには驚いて腰が抜けるかと思った。