土曜日の夕暮れ、
図書館から家路への道中をのんびりと歩いていた。

人通りの少ない道に入った時、
突然、目の前を冷ややかな風が吹いた。


見上げると空は、黒く分厚い雲に覆われていて。


たしか今朝の天気予報では、夕方から雨が強く降るらしい。


ぽつん、ぽつんぽつんと地面に雨粒がシミをつけ始める。

肩から掛けていたトートバックから、
折り畳み傘を取り出した。

雨が強くなる前に早く帰らなきゃ。


母の小言が思い浮かび、
取り出した傘を差しながら歩みを速めた。


折り畳み傘の形状をカチという音を立てて
安定させ更に歩みを進めようとした。


その時、進行方向に茶色い段ボールがぽつんと
置き去りにされていた。

トラックから落ちた資源ゴミか何かだろう。

一瞬予想してみるも、
そうではないことは一目でわかった。

誰かの意志によって置かれている箱とは違い、
その箱に哀愁を感じた。


持ち主に突然、置き去りにされ、
誰からも見向きもされなくなった落し物のような。

そんな、哀愁だった。


段ボールが組み立てられた状態で蓋がされていない。
遠くからでも箱が開いているのが分かる。

何だろう。何が入っているんだろう。