彼の告白を聞き私は驚いた。
今までの人生で告白された事がなかったからだ。
だけど答えは決まっていた。
「お断りします」

すると白起は驚いた顔を見せた。
「なぜだ?俺は秦の将軍だぞ。俺の女になれば確実に今より良い暮らしが出来るだろう。」

それを聞いて私は彼の告白を断って正解だったなと思った。
そして、白起をにらみつけて言った。
「私は私の名前も知らないような男の物にはなりません。それになんですか。その言い方じゃまるで私が良いくらいが出来るかどうかで男性を選ぶみたいじゃないですか。」

すると白起は笑い出し言った。
「お前。真面目すぎて面倒な女だな。成る程。こんなに美しいのに男の香りがしないのはそれが原因か」
「そうですよ。悪いですか?」

白起はそれを聞くと真剣な顔になり深く頷いた。
「いや。お前は正しい。先ほどの発言は詫びよう」

私は白起という人間が過ちを認め誤ることが出来る人物であると知り驚いた。
そしてもしかしたら彼とは分かり合えるかも知れないと思った。
すると白起は私に近づくと、私の縄を解いた。

それを見て周りの兵達は驚いたが白起は逆に彼らを陣から追い出し、私と彼は2人きりとなった。
「女。お前はもう自由だ。だが折角の縁だ。俺と話をしないか。」

私は少し悩んだが行くあても無いので彼の申し出に応じた。

「女。名前をなんと言う?」
「桃井恵子と言います」
「桃井恵子。変わった名だな。お前は趙の国の出身なのか?」
「いいえ。日本から来ました。」

すると白起は不思議そうな顔を見せた。

「日本?それは何処にある?」

私は少し考えた。
趙の国が具体的に何処にあるかは分からないけれど、恐らくここは中国だ。
つまり此処から東に日本はあるのだろう。

「ここから東にある島国です」

すると、白起は凄くうれしそうな様子を見せた。
私はなぜか白起の笑顔を凄く魅力的に感じ始めていた。

「実は俺の母も島国出身でな。もっとも西の方だがな。」

西の島国。
イギリスだろうか。
どうやら白起の東洋人らしくない見た目は、西洋の血が混じっているかららしい。

「それでお前はどうして趙の国に来た?」

私は少し悩んだ。
だが村人の逃げた先と異なり、私の出自は知られたところで困るものでは無いため正直に言う事にした。

「実は私はここよりずっと先の未来から来ました。」
「未来だと?」

それを聞くと白起は目を輝かせた。
「あの。信じるんですか?自分でも結構突拍子も無い事を言っていると思うんですけど」

すると白起はその綺麗な瞳で真っ直ぐ私を見つめて言った・
「勿論。驚きはする。だがお前は嘘がつけるような人間では無いだろう」

白起が私の話を信じてくれる。
私はそれが嬉しかった。
「ありがとうございます。まさか信じていただけるとは思いませんでした。」

すると白起は驚いた顔を見せた。

「どうしたんですか?」
私は白起に問いかけた。

すると白起は呆れた顔で答えた。
「それはこちらの質問だ。なぜ泣いている?」

白起にそういわれて私は始めて涙を流している事に気づいた。
そうか。
私は自分が思っていた以上に心細かったのかもしれない。
私はほんの少しだけ白起と出会えた事に感謝したのだった。