私は、楠木 柚葉。
私は、5年前、あの事故で大切な人、大切なものを無くした。
~5年前~
当時小四だった私は、お父さんと、お姉ちゃんと、私の3人で地元の花火大会に行った。
お母さんは、仕事で忙しかったから、一緒に行けなかった。
お姉ちゃんがトイレに行きたいと、言ったから、少し離れた空いているトイレに行った。
その待ってる間に事件は起きた。
私たちがいた場所はすぐ近くに信号があって、まあまあ車通りが多い道だった。
スポーツカーみたいな車が信号を無視して私たちに突っ込んできたのだ。
「柚葉!!!」
お父さんはそう叫ぶと、私の前に立った。

その後は、あんまり覚えていない。
ただ、はっきりと覚えているのは、
お父さんが車の下じきになっていることと、私の足が車のタイヤに引っかかっていることだった。

それから少しして、お姉ちゃんがトイレから出てきて、救急車と、パトカーを呼んだという。

それからどれくらいの時間がたっただろう。
目を覚ますと、何も知らない場所にいた。
周りを見渡してみると、泣きじゃくるお母さんと、下を向いている姉が座っていた。
「お母さん?お姉ちゃん?」
それに気づいたお姉ちゃんが、
「ゆず!!大丈夫なの!?大丈夫なのね、!?」
と、叫んだ。でも、それよりもお父さんのことが気になった。
「お父さんは?」
そう聞くと、お母さんが口を開いた。
「お父さんっ、はね、即死っ、だったってっ。」
お母さんが頑張って喋っている。
「お父さん、即死じゃないよ、最後、ゆずに言ったもん。」
「なんてっ、なんてっ言ったの...?」
「ゆずを守れてよかったよ...。大好きだ、ゆず。って、私の手を握ってくれたんだよ。」

もう、お父さんはいないけど、大好きだよ。
あの時。私の手を握ってくれた、左手は、お父さんの形見だよ。