*


 望んでいたわけじゃない。運命から逃げようとして失敗しただけ。

 逃げた? 違う。最初から逃げ場所なんてなかった。

 檻の中で見つけた醜い者。意図してそうしたわけじゃない。私は同じ人間だと訴えたはずだ。

 どうして、どうして……。



「飛び込んでしまおうか」



 不意にカサカサになった唇が言葉を紡ぐ。声に出すと本当にそうしたくなるから不思議。

 眼前に広がる海は、晴天の空に守られるようにキラキラしている。みんな真っ青で、入道雲の白が浮き出て少し違和感。

 波の音が私を責めるから、全部が自分のせいに思えて悲しくなる。

 友達が欲しくないわけじゃない。一人でいたいなんて嘘。



「嘘だよ、全部」