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淵くんはモテる。それも女子高生に特にモテるのだ。

今に始まった事でもないし、驚く事でもない。ましてや焦る事も今はない。と頭の中では思っていたのだが


「あっ、あの……!お姉さん!不躾なお願いなのですが、これを、あの人に渡しておいてくれませんか……!?」

「え……」


女子高生が私に向かって来るとは予想だにしていなかったので、現実は想像を遥かに超えてしまう。

あの人、と控えめに指さすのはもちろん淵くんだ。明らかに好意を持っているであろうその子は少し頬を赤らめさせている。震える指先が持っている裏向けられても透けて分かる可愛いメモ用紙には連絡先が書いているのだろう。

チラリと向こうでレジを打っている彼は此方の様子に気づいてはいないようだ。

果たして私は断るべきだったのだろうか。


「ほんっと~~にごめんなさい!この子面と向かっては無理だって言うからお姉さんしかいないんです!あ、あとお会計お願いします」

「あ、はい」


連絡先を渡そうとしてきた子の後ろにいた彼女の友達の存在にすら気づいていなかった私が断れる筈もなかった。

半ば反射的に受け取り、作業的にレジを打ったのだった。