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どうやら私は自分が思うよりも抜けているらしい。
借りた物は返さないと。と何度も何度も思って気にしても居た筈なのに、パスケースに入れていた彼の家のカードキーを返すのを忘れていたのだ。
その事実に、家に帰る為に駅の改札を通った所で漸く気づいたのだ。
先に私が改札を通り、端に寄って待っていると彼が同じように通ってくる。
彼も電車に乗って途中まで一緒だから運が良かった。
「淵くんごめんね。鍵返すの忘れちゃってて……これ」
「あーー、鍵ねぇ……」
考えるように声を上げて、うん。と頷きを一つ。
「瀬戸さんが持っててよ」
「うん?」
「ほら、何か付き合ってるっぽいし」
「う、うん……?」
只々困惑の相槌ばかり返してしまう私に対して、また妙にテンションが高い気がするような彼。
私だって付き合う事になるなんて思ってはいなかったし、浮き足立っているのは事実だが、案外彼だって純粋なのかもしれない。
「あ、でも折って使えなくなってもいいけど、落としたりしないでね」
「うん。そうだよね、セキュリティーちゃんとしてる所に住んでるんだから怖いよね」
「そうそう。これで、俺に何かあっても瀬戸さんが家まで来てくれるね」
冗談なのか本気なのかよく分からないトーンで、それでもクスクスと嬉しそうに笑って見せた。