…ピチチチ…


客間の障子から、朝日が差し込む。しばらくまどろみの中でゆらゆらしていた意識が、だんだんはっきりしてきた。慣れない畳の匂いにも安らぎを感じ、心が落ち着く。


(…穏やかな鳥のさえずりで目が醒めるなんて、なんて優雅な朝だろう。)


そろそろ起きなくてはと思いながらも、柔らかい布団に抱きついて寝返りを打った…

その時だった。


『起きろ、姫さん!』


「?!」


目の前に現れたのは整った顔。深紅の瞳が私を映す。

ぎょっ!とした瞬間、千鶴が私の胸元に手を伸ばした。


『あーあ。着物はだけてるぜ。伊織に夜這いでもされたか?』


「ぎゃぁぁぁっ?!!!」


到底女子とは思えない絶叫を上げると、素早い身のこなしで私から距離をとった千鶴が、驚いたように口を開いた。


『朝から元気だな。急に叫ばれたらびっくりすんだろ。』


「急に布団に入ってこられた私の方がびっくりするよ!」


『あー、安心しろ。寝込みを襲うほどカミサマは飢えてねぇから。』


「そういう問題じゃ…!」