私の所属は総務部らしい。
 間近にいても支社長がどんな仕事をしているのかよく分からない。
 前に頼まれた資料や出席した会議も外部へのプレゼンのようだった。

 そもそも支社長だ。
 それなりの待遇をされても良さそうなのに彼には秘書さえいなかった。

 そんな疑問はお昼の松山さんと河内さんとの噂話から始まった。

「花音ちゃんは異例中の異例って感じね。」

「何がですか?」

 河内さんの思わせぶりな言い方に疑問を投げた。

 私は松山さんと河内さんになんだかんだと可愛がってもらっていて、お昼もご一緒させてもらっている。

 最初の印象が『倉林支社長を食事に誘って来て』だったから、どんな先輩だろうとドキドキしたけれど、実際はサバサバしたいい先輩だった。

 河内さんはショートカットの短い髪を揺らしながら続けた。

「支社長の周りには若い女の子が配属されないのが定説。
 というよりも最初はいたのよ。」

「支社長のあの風貌のせいで女性間でトラブルが多発して。」

 松山さんまで参戦して応戦した。
 この話題は共通の認識事項なのだろう。
 二人の息もぴったりだ。

 二人が言いたいことは分からないでもないどころか、その光景が目に浮かぶようだった。

 私は二人が話してくれる内容を頷きながら聞いた。