次の日は残業をせずに約束していた陽真と飲み明かした。

 昔に戻ったみたい。
 このまま、ヨリを戻せばいいのかも。

 そんな安易な考えが頭をよぎった。

 陽真は優しい顔立ちで決して目立つタイプじゃないけれど、一緒にいると心安らぐ雰囲気を持っていた。

 きっと陽真と居れば穏やかな毎日を過ごせると思う。

「花音?」

 名前を呼ばれて錯覚する。
 目の前にいるのは倉林支社長じゃないかって。

 今、目の前にいるのは長年一緒にいて心安らぐ親友で間違っても会う度に心惑わすあの人じゃない。

 それなのに、あんなことがあったのに、思い浮かぶのはやっぱり倉林支社長で。
 私の名前を愛おしそうに呼んでこの場から連れ去って……。

 馬鹿みたい。
 今もなおそんなことを。

 私、好きなんだ。
 倉林支社長のこと。

 今さらハッキリと気づいても……。
 ううん。気付かなければ良かった。

「花音、聞いて。俺……。
 いや。今度にするよ。
 今はお互いにぐちゃぐちゃだ。」

 言い淀んだ陽真に苦笑する。
 本当、ぐちゃぐちゃ。