送り届けてもらってアパートに帰った。

 狭い我が家にものすごく安堵してフローリングにへたり込んだ。

「花音が欲しい」って甘い囁きが頭をグルグルする。
 私を求める彼の艶かしくて色気漂う表情を思い出すだけで顔が熱くなった。


 職場でも彼の顔を見るとどう接していいのか分からなくて、今までどう接していたのか思い出せないくらい戸惑っていた。

 それでも彼の至って変わらない態度に大人だもの、そういうものよ。
 そんな結論に達すると心は軽くなって、そしてジクジクと鈍い痛みを伴わせるのだった。