「で、結局それきりなの?」

社食の厨房で、花田さんはカレーを混ぜながら言った。

「当たり前じゃないですか」

「勿体無いなぁ。彼氏も居ないんだから、ちょっと遊ぶくらいいいのに」

本当に勿体無いなさげに言うから、こっちが戸惑う。

あの日から本当に彼には会うことはなかった。

最初のうちは、会社の出入りにさえ気を使ったものだ。

それが杞憂だと気付いたのは、あれから2週間位過ぎた頃だった。

……所詮、遊びとか暇潰しとかに決まってる。

別にかまわないと思った。

「そろそろ来るね」

花田さんの言葉と同時に、昼休みのチャイムが鳴った。

ちらほらと、社員たちの姿が見え始める。

「八木さんも来たよ」

花田さんが向けた視線の先を追う。

いつもと同じ光景だった。

皆に囲まれて、楽しそうに笑う八木さんの姿。


…………?