「じゃあ、俺はトレーニングがてら学校まで走って帰るから。じゃあね」

片手をあげて、明るく笑って先輩は、今来た道を走り出した。

「あ、ありがとう、先輩」

でも、ここから学校まで走ったら何十キロあるんだろ。大丈夫かな。

ぐんぐんスピードをあげていく先輩の後ろ姿を見て、羨ましいと思った。

いいな、先輩は。

彼はいつだって自由で、おおらかで、誰よりも優しく、そして強い。

彼はいつも、明確な目標に向かい羽ばたいていくんだ。

いいの?私はこのまま、彼を見つめているだけで?

私は、どうしたいの?

本当に、ただ先輩を見ているだけで満足なの?

ただ見ているだけの私が、彼とずっと一緒にいられるのだろうか。

このままじゃいけないのかもしれないと、漠然とだけどそんな風に思った。

急に正体不明の不安に襲われてしまう。

私、ずっと先輩の傍にいてもいいのかな。

ずっとあなたの傍にいたいよ、先輩。