「おー、つばさ、ミーティングさぼって、デートか？」

大谷さんは、怒ってる風でもなくニッと笑って冷やかしてくる。

「お、おうっ、また後でな」

つばさ先輩は、立ち止まらず早足になって通りすぎようとする。

照れくさいのか、あまり絡みたくないようだ。

私は、この時こっそり桜さんを見てしまったことをすぐに後悔した。

黙っている彼女がつばさ先輩を切なげに目で追う姿に、気がついた。

そして、わざと彼女を見ないようにするつばさ先輩の横顔に、私は胸の奥がヒリヒリと痛くなってしまった。