「晴花は恋しないの?」
唐突に聞かれた質問に私は飲んでいた牛乳を吹き出しそうになった。
「な、なに急に...」
ストローを口から離して、疑問の目を横にいる親友の沙菜(さな)に向けた。
「だって晴花の恋バナ聞きたいもん」
でた、恋バナ。
私はん〜、と唸り声を上げて考える。
恋をしないわけでは無いし逆にしたいという気持ちの方が数倍大きい。
けれど好きの気持ちが分からないのはどうしようも無いことで、憧れはいるけど『好き』かというとどこか違う。
現に一学年上の土屋先輩にそんな感じで曖昧な気持ちを向けていたりする。
私が答えないでいると、
「もう!せっかく晴花可愛いのに!」
と沙菜がとんでも発言をして私は右手の牛乳パックを落としそうになった。
「冗談はダメだよ沙菜」
「え〜冗談じゃないし〜」
プクーとほっぺを膨らませる沙菜の方が絶対可愛いのにな、と素直に思う。
実際に無愛想で人見知りな私と違って沙菜は明るくてお洒落な皆の人気者。
クラスで孤立してた私に声をかけて、一緒にいてくれたのも沙菜だったし。
そんな親友にあははと笑って誤魔化していると予鈴のチャイムが鳴った。
「もう予鈴〜?あれ次なんだっけ?」
「えっと確か体育だった様な...」
「やばい!関根じゃん!早く行こっ」
沙菜は顔を真っ青にさせながら私の裾を引っ張って前を走っていく。
その途中で土屋先輩が目に入ったけどやっぱり瞬間的に好きとはならない。
違うのかな...、と少し落ち込んだりした。