時期:中等部三年の秋
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私には任務がある。

それは花ノ宮学院の裏新聞部として、百合園新聞を提供すること。

表の新聞部とは違い、主に『花ノ姫』の方々についての記事だ。けれど、これは表には出回ってはならないので極一部の〝条件〟をクリアした花ノ姫ファンに配るのが私の仕事。


女子の中心である『花ノ姫』に関する記事なのに、何故秘密なのか?

それは萌えを供給することが目的だからよ。

そう……この花ノ宮学院にはお嬢様同士の花園を萌えという力により想像し、紙にしたためる者やイラストに描き下ろす者がいるのだ。

このことが『花ノ姫』の方々に知られたら大変なことになってしまうので、極一部の同じ趣向を持つ限られた者だけが入れる百合園同好会を結成したのだ。


 ある者は、萌えの源となる情報提供を。

 ある者は、そこから想像した物語を文字で紡ぐ。

 ある者は、その二つから漫画を描き下ろす。


 それが百合園同好会。



この日も私は手に入れた情報をまとめた大事な百合園新聞を持って同好会の部屋へと向かっていた。


「きゃ」

あろうことかまるで漫画の世界のように風が吹き、百合園新聞がひらひらと煽られて飛んでいってしまった。