ゆっくりと目を開ける。赤い緞帳が上がるように、徐々に視界が広がった。

「っぽ!?」

 なかなか人間から出なさそうな音が口から出てしまった。目の前でくっきりした顔立ちのイケメンがこちらを見つめていたから。口元には薄く微笑みが浮かんでいる。

「しゃ、しゃちょ……」

 思い出した! 私、社長と……。

 全身が熱くなる。ベッドの上でぐるりと回転して彼に背を向けた。シーツの感触が素肌に伝わってくる。

「おい、こっち向け」

 とんとんと裸の肩を叩かれる。

 無理。恥ずかしすぎる。顔を合わせられない。

 聞こえないフリをしてアルマジロのように固まっていると、突然腰のあたりから腕をズボッと差し込まれた。

 抵抗する間もなく、後ろからぎゅっと抱きしめられる。

「覚えてないとは言わせない。酒は入ってなかったからな」

 耳元に吐息がかかり、ぞくぞくと背中を震わせてしまう。

「覚えています。だからそっちを向けないんです」

 やっとのことでそう返すと、社長が背後でくすりと笑った。

「そうか。なあ、腹減らないか。昨夜は何も食べていないだろ」

 その言葉で、顔が燃え上がりそうなほど熱くなった。