密かに気にしてていた、その彼がベンチで、ひとり分の隙間を開けて私の横に座っている。 ここは彼がいつも降車している駅のホーム。まだ始発が動いてそんなに時間が経ってないのに、もう人目が気になるくらい利用客が一人二人増えていた。 「あの」 泣き嗄れた声を私は振り絞った。空気は湿って涙をまだ乾かしていないのに、喉はカラカラだった。 「ん?」 「どうもすみませんでした。取り乱しちゃって……」