「真紅ちゃんを助けた、ねえ……」

帰り道、私――桜木紅亜(さくらぎ くれあ)夜天に呟いた。

真紅ちゃんの暮らすアパートから離れて、独りで暮らしている家へ。

真紅ちゃんに、本当のことは伝えていない。

私には恋人などいない。本当は独り暮らしだ。

年頃の娘を独りで置いておくなんて、自分でも不用心で危ないことだとわかっている。

けれど、私と一緒にいる方が、真紅ちゃんにはずっと危険だった。

真紅ちゃんは何も、知らないから。

教えていないから。

……教えるには、真紅ちゃんは血が濃すぎる……。

そして私は、無能だ。

私は、自分伝いで真紅ちゃんの存在が知られないように、離れることでしか娘を護ってやれない。

「紅亜さん? こんばんはー」