「黒藤。あの娘、気をつけなさい」

病院の中庭に出た母上は、俺にそう告げた。

白は残党狩りをしている天音と無炎のもとへ、先に向かっている。

「梨実海雨の方ですか?」

「そうです。お前たちは真紅にあの娘の浄化を任せたのでしょうが、あの娘にあるのは妖異の残滓だけではない。……黒藤はわかっていて知らぬふりをしているでしょう?」

「……さあ」

誤魔化した俺に、母上は厳しい眼差しを向ける。それから、と俺が話す。

「母上、当主に戻られませんか? 現当主よりは、母上の方が統率も出来ましょう」

俺の提案にも、母上はふいっとそっぽを向いた。