「りゅうくん、りゅうくんってば。起きてよ!」


可愛らしい声で何度も呼ばれて、琉輝(りゅうき)はしぶしぶ返事をする。


「んー、何だよ。眠いんだけど」

「そうだけど、今日しかチャンスはないの! 約束したっしょ?」

「――ああ、そうだったな」

「早く行かなきゃ、先生にバレちゃうよ」

「わかったよ。ちょっと待ってろ」


まだぼうっとした頭を起こそうと、琉輝は左右に首を振った。

テントの入り口に、水色のパーカーを着た千花が座っている。

他の子を起こしてしまったのではないかと周囲を見回したが、幸い誰も気が付いていないようだった。


琉輝も起き上がり、寝袋の下に隠していたパーカーを素早く身につけ、それから周りを起こさないよう、小さな声で言った。


「いいか、もし途中で先生に見つかったら、トイレに行きたかったけど一人じゃ怖いから俺を呼んだって言うんだぞ」

「うん。わかった」

「それじゃあ、行くぞ」