いつのまにか俺は生まれたばかりの生命を抱き走っていた
紗智栞さんの命が危ないと伝えられたがそれより愛兎さんが心配だった
























最低だ





はは

乾いた笑いが口の隙間から漏れた




























漣は赤黒く染まり黒い煙を上げていた。
喧騒はまだ続いている
あちらこちらに見知った顔が倒れていた
敷地の奥建物の中
大男を



見つけた



























「愛兎さんっ…」











































視線が俺に集まった
っ………
























小刀を構えたまま男のそばまで走り寄る
「なぜここに…「ん。」
彼に上着で包んだ彼女を見せる
男は目を見開いて動きを止めた















男の大きな手は太刀を離し温かく小さな命を抱いた





















ーーー


気付いたら血のついた半紙を持って血だらけの男は走っていた
眠る命を抱えて



頬からはなにか雫が絶えず落ちる
彼らは少し離れた海で息を整えた
冬の海
沖から届く風は冷たい彼はそこで一夜を明かした














銀のタグを輝かせる少女と……


赤かった半紙は赤黒く乾燥し張り付いてしまった
















少女は鼻を赤くして鳴き声をあげた
朝だ
東の空が赤く染まる


海から見るそれはとても綺麗だった



















「おはよ…
今日………。」


男はよく分からぬことを発してあの場所へ向かった