林 ミリア side


いつも功くんはあの子ばっかり。


最初は、彼の顔が好きだった。
自分の自慢の一つになる。
そんな事を思って……



でも実際に、

「顔だけなんだろ?」って言われて、

自分のプライドも、何もかもが崩れて、
いつしか功からあの子を奪う事だけを考えてた。


あの頃は、自分でも恐ろしいと思うほど、猛獣のような目をしてた。



私の事なんて適当にあしらって置けばいいのに。

なのに、功くんは私にちゃんと対応してくれる。

優しい人なんだ。



それが、あの子を守るための社交辞令なのかもしれない。

それでもどこか、心をくすぐられるような感覚に陥っていた。




あの子は私よりもうんと綺麗な心をしてる。

だから羨ましくて、何度か意地悪もした。


自分がろくでなしだって、人でなしだって分かってても、変わる勇気がなかった。



体育館裏。

七瀬と手を組んでた事がバレて、
一目散に私は駆けだす。



目から何度も雫が垂れて、前がぼやけて見えなくなる。



「、え、ミリア?」


誰かが私を呼ぶ声がして、私の腕を掴む。


「やだっ!離して……!」


その腕を振り払おうとするけど、
その力には敵わなくて……


「っ俺だよ?蘭馬。ミリア、大丈夫?」



「えっ蘭馬?」


名乗られてようやく顔を見ていなかった事に気づく。



彼の名は、早川 蘭馬。
同い年の高校三年生。

そして私の……元彼。


「ミリア……泣いてる。」



蘭馬は片方の手で私の肩を持ち、涙を優しく拭う。


もう優しくしないで…。
そう言いたいのに、蘭馬の優しい声に溺れていく。


「蘭馬…もう、私といない方が良いの。
だから、放っといて?」



「嫌だ。元カノだからって、泣いてる女の子を放っておくわけにはいかないでしょ?」



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