ー2年後ー


「梨乃、行ってらっしゃい!」

「うん!お母さんもお仕事頑張ってね!」



お母さんはお仕事も落ち着いて、最近では一緒に食卓を囲める事が出来るようになった。


お兄ちゃんは大学に通って、少し離れたところでルナさんと一緒に暮らしてる。


お正月にはこっちに来てくれるみたい。
今日はクリスマスイブ。
だからそれまでの我慢!本当に楽しみなんだ〜〜!



私,帳梨乃は高校三年生となりました!
一足先に推薦で受験を済ませ、
つい先日、見事私立大学に合格いたしました!


そして功はワンランク上の大学に。
やっぱり、功は凄い。




「功!朝だよ、起きて!」



「………うんん〜。眠たい……
梨乃、おはよ。」


「功、おはよう。」


ぴょんと跳ねた功の寝癖に私はそっと触れる。



「こっち来て。」



功は優しく両手を広げ、綺麗な顔で私にほほえみかける。


これは……ハグの合図。


私はそっと功の背に手を回す。
功の背は今も伸び続けてるみたいで、
180㎝をゆうに超えている。



羨ましい限り。
そして功は、隙あらば私をちびだと馬鹿にする。



受験が終わってから、功はバイトを始めた。
買いたいものがあるんだとかなんだとか。


だからあまり二人の時間がなくて、ちょっぴり寂しかったりする。


二度目になるけど今日はクリスマスイブ!
二人でイルミネーションを見に行く予定なんだ。


「功、そろそろ離れよっか。もう10分くらいこのままだよ?」



「…」


私を抱きしめたままスヤスヤと眠る功。
私を抱き枕だと勘違いしてないか?


「功…?ちょっと、功!」


「っは!な、何?梨乃。」


あ、目さました。


「だから離れよって。」


「え、なんで?」


「何で?って…」


「へえ、梨乃は僕のことが嫌いなんだー。
そうかそうか、じゃあコレもいらないね。」


功はベッドの脇にある引き出しから小さな箱を取り出した。



「何それ。えっ…これって?」


そこにあるのは、キラキラと光る綺麗な指輪が…


「これ、クリスマスプレゼントに。
ほら梨乃って心配性だし、これがあれば
僕がずっと梨乃のそばに居るって伝えられるでしょ?」


よく……私が思ってる事を分かってらっしゃる。


「功……!最近バイトしてたのも、もしかして……」



「そ。ほらまだ高校生だし、こんな安物しかあげれないけど、いつかもっと梨乃にふさわしいもの贈るからさ。」


こんなステキなサプライズなのに、申し訳なさそうにする功…


イケメンかよ。



「私嬉しい!そんな……!
これで十分だよ。ううん、それ以上だよ!
私のために、頑張ってくれてたんだね。
ありがとう!

あ、でも功がバイトの時、寂しかったからもう一回ハグしてもらえる?」



「ふはっ…寂しかったの?喜んで。」


もう一度その広い胸に飛び込み、
顔を埋める。


シトラスの香りが鼻をかすめて、私の心をくすぐる。



「私ね、お父さんに会ったの。」


「え、?」


功に抱きついたまま、私は続ける。



「ほら、湖に行った時あったでしょ?
その時に。


話してなくてごめんね、

言われたんだよね。
お前もいつか捨てられるぞ。って。

お父さんの僻みだって分かってたんだけど、
どうしても頭から離れなかった。」




「梨乃…。僕はそんなつもりないよ。」




「うん。
今こうして指輪よりも欲しい言葉くれて、
なんか安心したの。

だから、絶対私を見捨てないでね。」



「……うん。一生かけて、幸せにするよ。」



「嬉しい!大好きだよ、功。」



そして唇を重ね合わせる。
優しく、とろけてしまうような優しいキス。


功は
そっと私の髪を撫でて、額をくっつける。


一番近くで…功を感じられる。
本当に……愛おしい。


「じゃ、また寝よっかな〜。」


「え、また寝るの?」


「うん、昼寝。梨乃もする?」



「10時だけど…うん!する。」







本当に…この能天気め。
すぐに寝ちゃうんだ。
それにたまに私をほったらかすんだ。
ほんとは寂しいんだからね。



でも優しいし、

時に紳士だし、

私の事、誰よりも大切にしてくれるし、

そばに寄り添ってくれるし。



私にとって功は特別。それ以上!


それで、とっても能天気。



あ、一応そんな所も好きだよ。


そんな事を思いながら、私はスヤスヤと眠る彼の頬をなでた。







『大好きな彼は、超能天気ボーイ』




END.2018.8.25