私が習っている書道の先生は、有名書道家の桐生倖嵐先生。



たかが学校の文化祭に、無理を言って来てもらうようお願いした。



次の部長は私に決まっていたけど、この前の選抜で負けたことが心に引っかかってた。



もう1年の子なんかに、負けたくない。



私にはスゴイ先生がついてるんだって、見せびらかしたかったのも…ある。



だけど、こんなことになるなんて…思いもしなかった。



桐生先生の孫で、1つ年上の大雅くんのことは知っていたし、大雅くんに妹がいることは聞いてたけど…。



あの子が、大雅くんの妹で…桐生先生の孫だったんだ。



しかも、あんなに上手いのに、桐生先生に罵られてる。



「いい気味だよね。

坂下や3年に気に入られてるからって、調子に乗るんじゃないっつーの。」



私の耳元で、同じ部活の同級生が囁いた。



駆けつけてきた部長が、桐生先生の前に立ちはだかって止めに入る。



それに対して、あの子は目も口も閉ざし俯いたまま、この場をやり過ごそうとしてるようだった。