夏休みに入っても、週1回の部活動は変わらなかった。



変わったのは、時間が午前中になったことと、部活動がない日は坂下が部室に詰めなくなったこと。



以前の私だったら、学校に行くのは面倒だと思ったに違いない。



だけど、坂下がいる日にはいつも部室に行っていた私は、週1回では何だか物足りなかった。



坂下との、たわいのないお喋りが楽しみで部室に行ってたっていうのあるし…。



夏休みが始まってすぐ、部活が終わった時だった。



他の部員たちは後片付けもそこそこに、帰っていく。



坂下と2人で片付けをしていると、渡り廊下を足早に歩く体育教師を見かけた。



どう考えても、こっちに向かって来ている。



「パパ、私を訪ねて来た人がいたら帰ったって言って!」



私は坂下にそれだけ言うと、物陰に隠れた。



「ワカ…?」



「とにかく、言う通りによろしく。」



頭をちょっと上げ、小声で坂下に言い放つと、うずくまった。



隠れたと同時に、部室のドアが開かれた。



「桐生は?」



体育教師の、少し大きめの声が聞こえた。



坂下、お願いだから追い払って!



「部活動は先程終わりましたが、桐生さんに用事があるのでしたら連絡を入れましょうか?」



坂下は体育教師の前に立つと、そう言った。



そんな、余計なことしなくて良いってば!



「じゃあ、お言葉に甘えて…。」



甘えるなー!



ってか、どうしよう。



坂下が知ったら、絶対怒られるよ…。