-2月14日-



私は、坂下の病室前にいた。



「桐生は自分のことより、坂下先生に迷惑をかけたくないって考えてるけど…。

自分の心を整理するために告るのもアリだと、僕は思うけど?」



蒼の部屋に泊まった時にそう言われて、今日なら伝えることができると思った。



チョコレートをあげたかったけど、食事制限されてるかもしれないし…。



だから、手にしているのはケースに入れられたブリザードフラワー。



中に入ろうと、ドアに手をかけた瞬間…。



人の話し声がしたから、そっとドアを開けた。



「院長、1つだけでも…。」



坂下の懇願するような声に、白衣の男はキッパリ拒絶の言葉を発する。



どうやら坂下は、アンジェ先輩が持ってきたチョコレートを食べたいらしい。



ため息をついた坂下は、その場にいたアンジェ先輩に向かって言った。



「アンジェ、今すぐ1つ食べてください。」



アンジェ先輩がその言葉に目を丸くしながらも従い、飲み込んだ瞬間…。



坂下が、彼女の唇を奪う。



貪るようなキスを目の当たりにして、私は踵を返し走り去った。



告白なんて、私には到底無理!



坂下の口から、拒絶の言葉なんて聞きたくない。



聞いたら、きっと私は壊れてしまう…。



すぐに息があがる私は、病院の敷地内にある大きな桜の木の下で息を整えた。



「それに…アンジェ先輩がいる限り、坂下と2人きりになれるチャンス無いし…。」



言い訳がましい言葉を呟き、ふと病棟を見上げる。



坂下の病室の窓から、ここが見下ろせるんだと気づいた。