「桐生さん…だったよね。」



教室で、前の席のコに話しかけられた。



「私、深夏。

さっき、すっごいイケメンと喋ってたでしょ?

あの人のコト、教えて?」



イケメン…?あ、アオイのことか。



「名前は、アオイマサキ。」



私が口を開いた途端、いきなり数人の女子が私たちの周りに群がって騒ぐ。



「アオイ先生って言うんだぁ、カッコイイよね!」



確かにイケメンだけど、鬼みたいにコワイよ?



「で、他には?」



群がったコたちが、もっと喋れと促す。



「…以上。」



「はぁ?何ソレ。」



名前以外は知らないっつーの。



「使えな~い。」



みんな、呆れるように去る。



名乗りもしない連中に、文句言われる筋合いない。



「何か、今のコたち…スゴかったね。」



ちょっと呆れたように深夏が言う。



「深夏さん。」



「ミカで良いよ。」



「私も、ワカって呼んで。」



ちょうど担任が入ってきたので、急いで言葉を続けた。



「アトで職員室行くけど?」



深夏は、前を向きながら親指を立てた。