僕は、坂下先生と一緒に職員室へ向かう。



喫煙所の前を通りかかった辺りで、職員室から教頭が顔を覗かせ、声をかけてきた。



「坂下、今日は無理に来させた形になって済まなかったな。」



「いえ、節目ではありませんから気になさらないでください。」



節目…?



話が読めない僕を置いて、教頭と坂下先生は話を続ける。



「今日は、娘さんの命日だろう?

去年は13回忌だったというのに、1年任せられて休めなかったと聞いたぞ。」



知らなかった…。



それに加えて、新任で入った僕の指導担当もしていたのだから、きちんとした法要をやっていないのかもしれない…。



「休みの教員が他にいるのですから、仕方ありません。」



「確かに有給は権利だが、式典にも関わらず平気で休みを取る最近の若い教師は、何を考えているのか…。」



教頭には内緒だけど…大方、女と遊ぶために休んだ空気読めないバカと一緒にされたくはない。



ムカッとしたのが顔に出たのか、教頭は僕の肩を軽く叩いて言った。



「蒼くんについては、安心して仕事を任せられるよ。」



「模範となる方に直接、指導いただいているお陰です。」



僕がそう言うと、教頭は軽く笑った。



「坂下が指導しただけあるな、将来が楽しみだ。」



実は生徒と恋愛してる身、期待を裏切って申し訳なく思う…。