「起きろ、咲島。遅刻するぞ」

安眠を妨害する低い声。体はものすごく休息を求めていてダルい。

眠りが浅くなった途端、頭痛に気がついて、私はうぅっと呻いた。

そうか、私、夕べ、飲みすぎてしまったから。久しぶりの二日酔いだ。

「ほら。しっかりしろ。いいのか、遅刻しても。俺は全然かまわないが」

いいわけない。ちゃんと起きなきゃ。とはいえ、低血圧のせいかぼんやりとして体が全然言うことを聞いてくれない。

っていうか、私の名前を呼ぶこの声は……?

「なんなら、俺が服を着せてやろうか。そういえば、お前の下着っていつもシンプルな白だよな。もう二十代も後半だろ? そろそろ色気を覚えた方がいいんじゃないのか?」

余計なお世話よ、働く女の下着は、色っぽさより着け心地重視なんだから。

だいたい色がついてると、服に透けたりするでしょう? 見せる相手もいないことだし……ん?

文句を言おうとしたとき。やっと働きだした頭が、私の下着の色を知るその声の持ち主を導きだした。

……神崎さん?