由真ちゃん、本当に大丈夫かな…?

何かヘマをして、それが原因でわたしじゃないって言うことが周りにバレたら…。

電車に乗って由真ちゃんが勤務している会社の最寄り駅へと向かいながら、わたしはそんなことばかりを考えていた。

窓に映っているわたしの姿は、まさに由真ちゃんだ。

わたしは最寄り駅に到着したら…と言うよりも、今から由真ちゃんのフリをしないといけない。

「わたしは由真ちゃん、わたしは由真ちゃん、わたしは由真ちゃん…」

ブツブツと呪文のように口の中で呟いて、自分に何度も言い聞かせた。

わたしは“香西由菜”じゃなくて、“香西由真”だ。

電車が最寄り駅に到着した。

わたしは深呼吸をすると、電車を降りて改札口へと足を向かわせたのだった。