10月後半。

そんな時期にやる体育祭は寒いのか暑いのかわからなくなる。






優勝を掛けて盛り上がるクラスもあれば、そんなに気にしてないクラスも。

いつもよりキラキラとキメている女子に関しては写真ばかり撮っている。











「次、借りモノ競走だって」


「ふーん」


「颯汰くん出るってよ!」


「私、トイレ行ってくる」


「は?ちょっと!見てからでも」


「漏れそうなんだよね」








また、逃げた。


昔みたいに泣くことはないが、逃げることが増えた。




これ以上、誰に対しても期待しないし、好きにもならない。






大袈裟にそう思ってしまうのは、両親の影響かもしれない。












「うわ、めっちゃ混んでる」





用も足す必要ないのに寄ったトイレが混んでた。

これは、あれか。




どうせだし。しかたないし。













颯汰くんを遠くからなら見てようかな。







やっぱり、颯汰くんが傍で笑ってくれないとどこか安心できない。

親に感じていた寂しさが、颯汰くんに移っていく。










「はぁ、もう、わかんない」










借りモノ競走の第1レース、第2レースと走り出していく。
モノは物というよりか、人らしい。





第5レースになって、1番外側にいた颯汰くん。

人混みの一番後ろにいる私には何となくしか見えない。













「お!2年C組のツッキーこと月島颯汰くん!お題はなんだ!!」







アナウンスが颯汰くんばかりに注目する。

やっぱり、人気なのか。颯汰くんがキョロキョロと何かを探しているだけで黄色い悲鳴が上がっている。








「おや?颯汰くん、このままじゃ、ビリになってしまう!誰か!!君は誰を探してるんだ!!」









颯汰くんがアナウンスの所へ行った。









「え?!俺?!」


「ちげぇよ」









あの時、怖い男の子を蹴った時の颯汰くんの声だった。

口調が荒くて、行動が雑。




苦手な人。













「マイク」


「へ?」


「マイク貸せつってんの」





アナウンスで流れる会話が苦手意識を働かせる。






「水島 陽。今すぐ俺のところに来い」




荒い口調のまま。いつもの優しさはどこにいったのだろうか。