「なぁ伊織」


「なんだよ」



俺は疲れて寝てしまった七瀬をベットに倒す。



「七瀬がお前のこと好きな理由、今の俺ならわかる」


「はぁ?」


「伊織は、他の誰もわからない七瀬の本音をわかってあげられる。


そこだよ。


自分のことを唯一わかってくれる人」


裕樹は隣のベットに腰掛ける。


「当たり前だろ。ずっと一緒にいるんだから」


「中学3年間もあいたら、勝てる余地あると思ったんだけどな…。


無理だわやっぱ」


そう言って裕樹はベットに勢いよく倒れた。


「俺さ、円満でなんか別れてねぇよ」


「は?」


「七瀬に一方的フラれた。ここに入ってから。


会長の面倒見なきゃいけなくなったから、裕樹には辛い思いをさせることになる。だから別れてほしい。


こんなの建前に決まってる。わかってた。


七瀬がお前のこと好きだってわかってたよ。


だから、伊織に近づいた。確かめてやりたくなった。


俺をフッた七瀬が唯一褒める男を」



初耳だった。


今まで裕樹は円満だったと言ったし、七瀬には聞いたこともなかった。


「俺、本当に好きだったんだよ…。


その頃してた女遊びもやめてさ。七瀬だけにした。


でも、それは七瀬には通じなかった。お前がずっと、七瀬の中にいて。


…俺の入る余地なんかどこにもなかった」


「裕樹…」