ついにこの日が来てしまった。
おろしたての制服に袖を通す。
これからよろしくね…
心の中でそうつぶやいた。

今日は桜女学院中等部の入学式。
私、星山椿は今日から中学生になる。
新しい生活が始まるワクワクした気持ちもあったが、
友達ができるのかという不安な気持ちの方が大きかった。
桜女学院には小学生の頃からの幼なじみも一緒に入学したものの、あとは知らない人ばかり。
人見知りで引っ込み思案な私はやっていけるのか。

不安な気持ちのまま校門をくぐった。
地面には桜の花びらでいっぱいだ。
「おはよー!椿!」
「あやめ、おはよう!」
あいさつしてきたのは、幼なじみの北原あやめ。
いつも私をリードしてくれる存在だ。

「クラス一緒だといいなあ。」
「去年はあやめと離れちゃったし、今年こそ!」
「だね!あ、新入生集合だって。行こ!」
私は走ってあやめの後を追う。

「はーい、クラス発表です!プリント配りますよ。」
私はドキドキしながらプリントを受け取った。
A組の欄に『星山椿』と書かれてあった。
「あやめ、何組?私A組だけど…」
「えー!あたしC組。まじかー」
「離れちゃった…私、あやめがいなきゃ…」
「大丈夫、椿。あ!学校一緒に行こうよ!」
「う、うん。」
私はそのままA組の教室に移動した。
教室には楽しそうな話し声が響いていた。
きっと皆小学生の時からの友達なのだろう。
何人か1人でいる子もいたが、もちろん声をかけることはできなかった。そのまま入学式は終わった。

「ただいま。」
「あら、おかえりなさい。クラスどうだった?」
家に帰ると母が心配そうに聞いてきた。
「あやめと離れちゃって。」
「そう…まあ、いつか友達できるわよ。」
「それができないの!」
私はそう言い張って、自分の部屋のドアをガチャンと閉めた。

私だって1人は嫌い。
友達とにこにこ笑っていたい。
でもどうやって作るの?
誰か教えて…