今日も試験は二科目、数学と国語だ。

 よその学校では数学Iと数学Aに分けられているところもあるらしいけど、糸原高校は数学はまとめて一つだけだから助かる。

 高志は試験中、少し手を動かしただけで、あとはずっと腕を組んでうつむいていた。

 あいつちゃんと進級できるのかな。

 試験が終わると高志はすぐに教室を出ていってしまった。

 仲直りする気があるんだろうか。

 凛が僕の席に来た。

「今日はどうするの?」

 今日は金曜日で、土日は試験がないから暇だ。

 いや、もちろん暇という言い方はおかしいのは分かっている。

 ちゃんと真面目に勉強するべきなんだろうけど、僕らにはそういう積極性や自主性はない。

 結局、先延ばしなんだ。

 高志のことを悪くは言えない。

「何もないけど」

「だろうね」

 凛は僕の顔を見てうなずく。

「来なよ」

「どこに?」

「あたしの気晴らしにつきあってよ」

「勉強は?」

「そんな気分じゃない」

 だろうな。

 いつもそんな気分じゃないし。

 おなかもすいてきたし、つきあってやるか。

「お昼でも食べに行こうか」

「いいね、朋樹のおごりね」

「いや、お金ないし」

「じゃあ、二人で一つのパフェ食べようよ」

「それデザートじゃん」

「いいから行くよ」

 凛が星条旗マフラーを巻いて先に教室を出ていく。

 僕はあわてて追いかけた。