時雨、時雨!
目が覚めると、そこには幸せそうに笑うお母さんがいて、起き上がると、窓の外で車に荷物を積むお父さん。
早く準備しちゃいなさい、時雨。
優しく声をかけるお母さんは、あたしの頭をポンポンと優しく撫でて、お父さんのところへ走っていく。
窓の外には、お母さんとお父さんが見える。
だめ、だめなんだよ。
だめなんだってば。
窓の外にいるはずの二人がどんどん遠ざかっていく、遠ざかって行って、いつの間にかあたしは、道路に立っていた。
引っくりがえった車と、漏れ出すオイル。
オイルは、少し赤黒い。
視界が赤くなって、手で拭うように目を擦ると、手が赤く染まって、
あたしの嗅覚は、雨のにおいに支配されて
ほら、言ったじゃない。
だめだって。
言ったじゃない。
なんで?なんで?
「なんで」